アルツハイマー病の新しい治療薬レカネマブ(レケンビ®)が2023年12月20日に、ドナネマブ(ケサンラ®)が2024年11月26日に発売となりました。どちらも、アミロイドβと呼ばれるタンパク質を脳内から除去する新しい作用をもった薬剤です。当院でも、厚生労働省が定めた「最適使用推進ガイドライン」に従い、安全に投与できる体制を整えています。治療をご希望の際にはお気軽にご相談ください。
抗アミロイドβ抗体薬とは?
抗アミロイドβ抗体薬とは、アルツハイマー病の治療選択肢として新たに登場した薬です。 アルツハイマー病の原因物質とされるアミロイドβを除去することで症状の進行を遅らせる効果があり、アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)や軽度認知症の方が対象になります。
MCI・軽度認知症を早期に発見し、治療を行うことで自分らしい生活を1日でも長く送り続けることが可能になることが期待できます。
「ケサンラ®」と「レケンビ®」
ケサンラ®(一般名:ドナネマブ)
ケサンラ®は、アミロイドβが集まり固まってできた「Aβプラーク」に結合し、異物を除去する働きを持つミクログリア細胞を呼び寄せます。その結果、アミロイドβプラークの除去が促進されると考えられています。
治療頻度
4週間に1回、30分以上かけて点滴を行います。投与期間は原則最長1年半(18ヶ月)で終了、最短1年(12ヶ月)で治療を終了することが可能です。
レケンビ®(一般名:レカネマブ)
レケンビ®は、アミロイドβが貯まる段階で形成される「Aβプロトフィブリル」に結合し、ミクログリア細胞を呼び寄せます。その結果、アミロイドβの蓄積を抑えると考えられています。
治療頻度
2週間に1回、1時間以上かけて点滴を行います。投与期間は1年半(18ヶ月)以上で1年半後に継続の可否を判断します。
受診から検査と治療までの流れ
専門医による診察を受けながら、以下のような流れで治療を行います。
1.事前検査
MCIや軽度認知症の状態を確認するために、事前検査を行います。
- MMSE(ミニメンタルステート検査)
認知症の疑いがあるときに行う神経心理検査です。(所要時間:15分程度)
認知機能を点数化するために、いくつかの質問や問題を出題します。 - CDRスコア(臨床的認知症尺度)
認知機能や生活状況について、診察や家族など周囲の人からの情報に基づき評価します。
受診の際は、ご家族などの同伴者の方とご来院をお願いいたします。 - MRI検査
脳の萎縮が進行していないか、微小な出血がないかなど脳の状態を確認します。
2.アミロイドPET検査
MCIや軽度認知症と判断された場合、次に、実際に脳内にアミロイドβがどれくらい溜まっているかを画像で確認する 「アミロイドPET検査」を行います。
山梨県では、中央市にある山梨PET画像診断クリニックにて検査を実施します。
3.治療開始
アミロイドPET検査で陽性(脳内にアミロイドβが蓄積している)と診断された場合、「ケサンラ®」と「レケンビ®」による治療が適応となります。治療開始後も定期的に効果と安全性の確認を行いながら治療を行っていきます。
最後に
認知症は誰でもなり得る疾患であり、現在の医療では完治させることは困難です。しかし、進行を遅らせられる薬が登場したことで今まで認知症になってしまったら手の届かなかった「ご家族との大切な時間」や「人生の楽しみ」を続けられる光が見えてきました。治療できる段階(MCI・軽度認知症)で見つけるためにも、「日常の変化」や「もの忘れ」に気づいたらすぐにご相談ください。